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性感染症・おりもの

性感染症について

01 性感染症について

性感染症(STD)とは、病原体を持つ相手との性行為やその他の性的な接触によって、性器や皮膚などに感染症が引き起こされる病気の総称です。

症状がほとんど現れないまま進行するものも多く、気づかないうちに感染が広がってしまうケースも少なくありません。「もしかしたら…」と少しでも気になる症状がある場合は、早めに受診することが大切です。

02 性感染症の現状

性感染症は、性行為の経験があれば誰にでも感染する可能性があります。特定のパートナーがいる方でも、決して他人事ではありません。

国内で最も感染者数が多い性感染症は「性器クラミジア感染症」で、20代を中心に幅広い年代で感染が見られます。自覚症状が乏しいため、感染していても気づかずに過ごしている方が多いことが大きな問題となっています。

また近年では梅毒感染者が急増しており、2022年(令和4年)の全国の報告数は13,220件に達し、1999年の感染症法改正以降で最多を記録しました。性感染症は決して珍しい病気ではなく、早期発見・早期治療が何より重要です。

性感染症報告数(令和4年)

性感染症 女性 男性
性器クラミジア感染症 14,558件 15,578件
性器ヘルペス 5,363件 3,342件
尖圭コンジローマ 2,029件 3,950件
淋菌感染症 2,260件 7,733件
梅毒 4,519件 8,701件

参考:厚生労働省 性感染症(STD)報告数の年次推移

03 よくある性感染症

性感染症は種類によって症状や進行のしかたが異なります。

見た目や症状だけで判断するのは難しく、検査を受けて初めてわかるものも多いため、気になる症状があればお気軽にご相談ください。

性器クラミジア感染症

国内で最も感染者数の多い性感染症です。女性の場合、膣から体の内側へと感染が広がり、子宮・卵巣・卵管の炎症(骨盤内炎症性疾患)に発展することがあります。無症状のまま進行するケースも多く、放置すると卵管障害(卵管の詰まり)や肝臓の炎症を引き起こす可能性があります。

妊娠中に感染すると早産の原因となるほか、出産時に新生児へ感染するリスクもあります。

また、オーラルセックスによる喉への感染や、目への感染による結膜炎なども見られます。

主な症状

  • おりものの増加
  • 下腹部痛
  • 発熱・風邪様症状
  • 不正出血

検査と治療

おりもの検査・採血・内診などを組み合わせて診断します。治療はクラミジアに有効な抗菌薬を1週間程度内服します。

淋菌感染症

以前は「淋病」と呼ばれていた性感染症です。クラミジアとの重複感染が多いため、診断が確定するまでの間は両方に対して治療を行うことがあります。

主な症状

  • 排尿時の痛み
  • おりものの増加

検査と治療

女性の場合、おりもの検査では判断が難しいため、膣内をぬぐってPCR法で淋菌の有無を確認します。クラミジアも同時に検査できるキットを用いることもあります。

治療は抗菌薬の注射を1回投与して終了です。クラミジア感染が疑われる場合は、内服の抗菌薬も同時に処方します。

尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染によって、性器周辺に複数のいぼ状のできものが生じる病気です。自覚症状は少ないものの、できものの場所や大きさによっては痛みや痒みを感じることがあります。

HPVは子宮頸がんの原因ウイルスとして知られていますが、尖圭コンジローマと子宮頸がんはウイルスの型が異なるため、尖圭コンジローマから子宮頸がんに進展することはありません。

主な症状

  • 性器周辺に粒状または鶏のとさか状のいぼが複数発生する

検査と治療

感染機会の確認とできものの視診で診断できることが多く、必要に応じてDNA検査でHPVの型を確認します。

治療はレーザーや液体窒素によるいぼの除去、または軟膏を塗布する方法があります。治療期間は3ヵ月以上かかることが多いため、再発防止のためにもしっかりと通院を続けることが大切です。

梅毒

梅毒トレポネーマという菌が原因で起こる性感染症で、近年感染者数が急増しています。性器だけでなく全身にさまざまな症状が現れ、長期にわたって進行することが特徴です。

進行と症状

時期 感染からの期間 主な症状
第1期 3〜6週間 性器周辺に硬いできものが複数生じる(痛みはない)。足の付け根や首のリンパ節が腫れることも。数週間で症状は自然に消え、無症状の期間に入る。
第2期 3ヵ月〜 顔・体・足の裏などに赤い発疹や盛り上がった発疹、口内の炎症など多彩な症状が現れる。数週間〜数ヵ月で症状は消える。
第3期 3年以上 硬いしこりやゴム状のできものが生じる
第4期 10年以上 神経障害・麻痺などが現れ、日常生活に支障をきたす

検査と治療

血液検査と診察で診断します。感染直後は検査で陽性が出ないことがあるため、日をあけて再検査することが重要です。

治療はペニシリン系抗菌薬の注射または内服で行います。第1期であれば2〜4週間で治療が完了しますが、進行するほど治療期間が長くなります。近年は初期であれば1回の注射で治療できる新薬も登場しています。

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルスが原因で、性器周辺に水ぶくれ(水疱)が多数生じる病気です。水疱が融合して痛みを伴う潰瘍になることもあります。初感染時は症状が強く、再発時はやや軽めになることが多いですが、約80%の方が再発を繰り返すといわれています。症状が軽い場合でも他者への感染リスクがあるため、きちんと治療を受けることが重要です。

一度感染すると、ウイルスは体内の神経に潜伏し続けます。ストレスや体調不良などの免疫低下時に再発しやすいため、日頃の生活習慣を整えることも大切です。

主な症状

  • 水疱・水ぶくれと強い痛み
  • 痛みによる排尿困難
  • デリケートゾーンの違和感
  • 足の付け根のしびれ感

検査と治療

診察と血液検査などで診断します。

抗ウイルス薬の内服または点滴で治療し、1〜2週間程度で症状が改善します。潜伏しているウイルスへの効果はないため再発を完全に防ぐことは難しいですが、症状を早く抑えることができます。

HIV感染症

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症です。HIVによって体の免疫機能が低下し、さまざまな感染症や合併症を発症した状態を「エイズ(後天性免疫不全症候群)」と呼びます。

進行と症状

時期 感染からの期間 主な症状
初感染期 2〜6週間 発熱・リンパ節の腫れ・咽頭炎・筋肉痛など風邪に似た症状が現れる。体内のウイルス量が最も多い時期。足の付け根や首のリンパ節が腫れることも。数週間で症状は自然に消え、無症状の期間に入る。
無症候期 数年〜数十年 無症状のまま経過する。個人差が大きく、この時期も他者への感染リスクがある。数週間〜数ヵ月で症状は消える。
エイズ期 数年〜数十年後 免疫機能の著しい低下により、日和見感染・リンパ腫などさまざまな疾患が発症しやすくなる。

検査と治療

血液検査で感染の有無を調べることができます。

以前は有効な治療が限られていましたが、現在は複数の抗ウイルス薬を組み合わせた治療によってエイズの発症を抑えることが可能になっています。

04 性感染症の問診でお伺いする内容

受診の際には、正確な診断のために以下の内容をお伺いすることがあります。

  • 性交渉をした時期
  • パートナーの性別
  • 過去一定期間のパートナーの人数
  • 職業
  • 過去に性感染症にかかったことがあるか

これらはすべて、適切な診断と治療のために必要な情報です。患者さまを責めたり、判断したりするためにお聞きするものではありません。どのような状況であっても、安心して正直にお話しいただける環境を大切にしています。

05 性感染症になったら

早めの受診が大切です

「まさか自分が…」「婦人科に行くのは恥ずかしい」という気持ちから受診が遅れてしまう方も少なくありません。しかし、性感染症を放置するとさまざまなリスクが生じます。クラミジアや淋菌感染症は不妊の原因となることがあり、妊娠中の感染は母子感染によって赤ちゃんに影響が出ることも。梅毒のように、早期に治療しないと治療期間が長くなる感染症もあります。「おかしいな」と感じたら、早めにご相談ください。

治療で大切な3つのこと

性感染症の治療では、以下の3点が特に重要です。

  • 1. 治療を最後まで続けること
    途中で服薬をやめると、菌やウイルスが薬の効かないタイプに変化したり、再発して治りにくくなる原因になります。症状が改善しても、処方された治療は必ず最後まで続けてください。
  • 2. パートナーも一緒に治療すること
    ご自身だけが治療しても、パートナーが未治療のままでは感染を繰り返してしまいます。必ずパートナーとともに受診・治療を受けてください。
  • 3. 治癒の確認を行うこと
    症状が消えても、完全に治癒していない場合があります。治癒確認のための再受診をお願いすることがありますので、ご協力ください。また、治癒が確認されるまでは性交渉を控えることが大切です。

おりもの

06 おりもの異常について

おりものは、子宮や膣から分泌される女性特有の分泌物で、健康状態を映し出すバロメーターのひとつです。色・量・においの変化に日頃から気を配ることで、病気の早期発見につながることがあります。

07 おりものの役割

おりものは「下着が汚れるもの」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、女性の体を守るために欠かせない大切な働きをしています。

雑菌の侵入を防ぐ(自浄作用)

おりものには「自浄作用」と呼ばれる、膣を雑菌から守る機能があります。

おりものの中には「デーデルライン桿菌」という体に有益な乳酸菌が存在し、膣内を酸性に保つことで有害な菌が増殖しないようバリアの役割を果たしています。この自浄作用のおかげで、膣内は常に清潔な状態に保たれています。

受精を助ける

おりものは月経周期に合わせて性状が変化します。月経直後はほとんど分泌されず、その後はさらっとしたおりものが出るようになり、排卵期になると量が増えて糸を引くような粘り気のある性状に変わります。

これは、排卵期に精子が膣内に入り込みやすくするための変化です。通常、膣内は酸性のためアルカリ性の精子にとって過酷な環境ですが、排卵期に分泌される粘り気のあるおりものが精子を包み込んで保護し、卵子への到達を助けます。

08 おりもの異常の原因

おりものの色・においや量の変化は、さまざまな原因によって生じます。一般的に、正常なおりものは白〜透明で、下着に付着して時間が経つと黄色く変色することがあります。においはやや酸っぱい程度が正常です。

以下のような状態が続く場合は、何らかの異常が起きているサインかもしれません。

洗いすぎ・ストレスによる細菌性膣症

においや量が気になるあまり、デリケートゾーンを過剰に洗いすぎていませんか?石けんでゴシゴシ洗うと、膣を守るデーデルライン桿菌まで洗い流されてしまい、膣内の細菌バランスが乱れて細菌性膣症を引き起こすことがあります。

また、ストレスや疲労の蓄積、風邪、月経前後なども膣内環境を乱す原因になります。おりものの変化は体調のサインでもあるため、日々の生活習慣の見直しも大切です。

なお、細菌性膣症の原因は多様で、必ずしも性感染症とは限りません。性交渉の経験がない方や、ご高齢の方にも発症することがあります。症状が続く場合はお気軽にご相談ください。

性器カンジダ症

性器カンジダ症は、もともと体内に存在するカンジダ菌がストレスや疲労・免疫低下などをきっかけに異常増殖することで発症します。性感染症とは異なり、性交渉の有無とは関係なく誰にでも起こりうる感染症です。

ただし、症状のある時期に性交渉を行うとパートナーへ感染することがあるため注意が必要です。

主な症状

  • デリケートゾーンの強いかゆみ・熱感
  • おりものの増加(ヨーグルトやチーズのような性状)
  • においの変化

検査と治療

問診・おりもの検査・内診を組み合わせて診断します。治療は腟錠・坐薬・軟膏などを症状に合わせて組み合わせて使用します。

性感染症

クラミジアや淋菌などの性感染症に感染すると、おりものの色や性状が変化することがあります。においや色の変化が続く場合は、我慢せずに早めに受診し、検査を受けることをおすすめします。

疑いのある病気 性状・においの特徴 その他の症状
クラミジア感染症 黄色〜黄緑色 量が増える・水っぽい 発熱、下腹部痛
淋菌感染症 黄色〜黄緑色 量が増える・腐敗臭 発熱、下腹部痛
トリコモナス膣炎 褐色〜黄緑色 泡立った水っぽい性状・腐敗臭 かゆみ、ヒリヒリ感

おりものに血が混じるとき

おりものに血が混じる「不正出血」は、ホルモンバランスの乱れや排卵が原因のこともありますが、婦人科系の病気のサインである可能性もあります。

疑いのある病気 主な症状
子宮頸部びらん 子宮の入り口にできる良性の変化。ほぼ無症状だが、性交渉や運動などの刺激で出血しやすい
子宮筋腫 不正出血のほか、月経期間が長引く、経血量が増えるなどの症状が出ることもある良性腫瘍
子宮内膜症 子宮内膜が子宮以外の場所に発生する病気。不正出血のほか、下腹部痛や性交痛も伴う
子宮頸がん 初期はほぼ無症状。進行すると性交時の出血、茶色や水っぽいおりものが現れることがある
子宮体がん 不正出血が主な症状。50代以降に多く、閉経後の不正出血は特に早めの受診が必要

においだけが気になるときのセルフチェック

おりものの見た目に変化がなく、においだけが気になる場合は、日常の習慣が原因かもしれません。以下を確認してみてください。

  • おりものシートやナプキンをこまめに交換していますか?
    見た目が汚れていなくても、1日に3〜4回程度は交換しましょう。長時間の使用は雑菌の繁殖や皮膚炎の原因になります。
  • 生理でない日にナプキンを使用していませんか?
    おりものシートよりも吸水性の高いナプキンは蒸れやすく、においや細菌性膣症の原因になることがあります。おりものシートで対応できない量が毎日続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性がありますのでご相談ください。
  • タンポンの抜き忘れはありませんか?
    まれに膣内にタンポンが残ったままになっているケースがあります。雑菌の繁殖や感染症の原因になりますので、心当たりのある方はすぐにご受診ください。

09 少しでも違和感を感じたら早めの受診を

おりものの変化は、体からの大切なサインです。「これくらいなら大丈夫」と自己判断せず、いつもと違うと感じたら早めにご相談ください。おりものの異常をきっかけに病気が発見されることも多く、早期受診が早期治療につながります。どんな些細なことでも、お気軽にご来院ください。