女性の老年期
女性についていえば、更年期が完全に終了し、閉経がおとずれたとき、
老年期はゆっくりと始まります。
卵巣は完全にその機能を停止し、卵巣からのホルモン分泌はみられなくなり、
下垂体からの性腺刺激ホルモンはむなしく多量に分泌され続けます。
卵胞ホルモン分泌の低下は、からだの各所 の変化を起こします。
皮膚の弾力性がなくなり、皮下脂肪が減少するため深いシワがよります。
筋肉も力が弱くなり、骨はもろく、ちょっとした運動でケガをしやすくなります。
乳房もはりを失い、乳腺は萎縮し、平坦化し、乳頭だけが干しブドウのようにくっついて
垂れ下がります。
子宮も萎縮して小さく、子宮腟部も小さくなり、腟部びらんも退縮し、
外からみえなくなります。
外陰部、腟も萎縮し、伸縮性や弾力性は極度に低下し、狭小となります。
腟壁は菲薄化するため、おりものもほとんどなく、乾燥ぎみとなり、
わずかな接触でも出血しやすくなります。
腟の自浄作用は落ちて、老人性腟炎、非特異性腟炎を起こしやすくなります。
性毛も白くなり、薄くなります。
声がしわがれ、口のまわりに濃い毛がはえたり、
シミが増え、頭髪も白く、薄くなります。
卵胞ホルモンの欠如(けっじょ)は、骨組織(こっそしき)にも影響を及ぼすため、
骨がもろく骨折しやすい骨粗鬆症、ひじやひざその他の関節がギクシャクして痛くなる
変形性関節症(へんけいせいかんせっしょう)、腰痛、脊椎弯曲(せきっいわんきょく)などや、
歯が抜けたり欠けたりしやすくなります。
その他、歯が悪くなるのにあいまって、胃腸などの消化吸収機能は落ち、
肺の弾力性が低下するため、老人性肺炎を起こしやすくなります。
栄養代謝の変化は血管の硬化を起こし、高血圧、心筋梗塞が起こりやすい状態になります。
こんなにさまざまな変化は、決して一時的におそってくるものではなく、ひと足ひと足、
知らず知らずに現れます。
ホルモンの変化、細胞の変化、血液の変化、酵素の変化などなど、エイジングや老化にともなう
アポトーシス現象について、いろいろな角度から、老人学という学問研究がおこなわれています。