卵巣から分泌されるホルモン
卵巣からは、下垂体前葉からの刺激ホルモ ンを受けて、卵胞ホルモンと黄体ホルモンが 分泌されています。
この二つのホルモンは、女性の一生を支配 し、大きな役目を果たしているので、一般に 女性ホルモンとよばれています。
卵胞ホルモンと黄体ホルモンは排卵を軸として、周期的に分泌されているわけですが、平均的には、
卵胞ホルモンの分泌されている期間が2週間、黄体ホルモンが2週間となります。
●卵胞ホルモン
卵胞が成熟して分泌された卵胞ホルモンは、血液の中にまじって肝臓を通ったのち、からだのすみずみまで運ばれてゆきます。
まず、子宮へ行って、子宮の壁をつくっている子宮筋を肥大増殖させ、その内側にある内膜をも増殖させます。
また、子宮頸管というところに作用して、頸管粘液を分泌させ、おりものを増やします。
ちょうど排卵の直前に出る水っぽい鼻汁のようなおりもので、外陰部がしめっぽくなるのはこのせいなのですが、
これは卵胞ホルモンの分泌がピークになり、妊娠のためのからだの準備が終了したことを知らせているのです。
女らしい丸みをおびた、ふっくらとした体型をつくるのも、この卵胞ホルモンの作用で、皮下脂肪組織を増殖させる働きがあります。
そして脂肪組織が増えると、肌に弾力が出てはりのあるいきいきとした肌になります。
卵胞ホルモンが分泌されはじめる思春期のころには、このホルモンの働きによって乳房なども形よくでき上がります。
ですから思春期にホルモンの分泌が悪がったり、ホルモンの主成分である牛乳や卵黄に含まれるコレステロールの摂取が
少なかったような場合は、乳腺組織が十分に発達しない場合もあります。
卵胞ホルモンには、このほかに肌の表面の新陳代謝を盛んにする働きもあり、アカぬけて色白の肌をつくり上げます。
俗に卵胞ホルモンのことを、発情ホルモンとよぶことがありますが、これは卵胞ホルモンが性感を助け、
性欲を高める働きをもっているからですが、しかし、いたずらに性欲を起こさせるものではなく、
妊娠の準備が整ったことを知らせるためのものと思われます。
更年期を迎えると、卵巣の働きが衰えてきて、卵胞ホルモンが分泌されなくなります。
そして、それと同時に、排卵や月経もストップしてしまいます。
●黄体ホルモン
排卵が起こると、今まで卵胞ホルモンを分泌していた卵胞は、黄体という組織に変化して、黄体ホルモンを分泌しはじめます。
そしてほぽ2週間働き続けたのちに、しぜんに退行していきます。
黄体ホルモンの役割は、卵胞ホルモンによって下地をつくられた組織すべてに対し、さらに手を加えて、完成させることです。
卵胞ホルモンによって増殖、発育した乳腺組織は、黄体ホルモンの作用でいっそう充実し、美しい乳房の形になります。
また、増殖された子宮内膜に対しても、これに分泌物を蓄えてフカフカにする作用をもっています。
これは排卵された卵子が、精子とめぐり会って受精した場合、子宮内膜に受精卵が着床しやすくするためです。
これを妊娠と呼ぶわけですが、妊娠すれば 黄体は黄体ホルモンを分泌し続け、無事出産するまで子宮内膜をそのまま保存します。
妊娠しなかった場合は、黄体が2週間ぐらいでしぜんに退行してゆきますので、黄体ホルモンの子宮内膜に対する作用はなくなり、
厚くなった子宮内膜は不用の組織として、子宮から流れ去ります。これが月経です。
また黄体ホルモンは、卵胞ホルモンによって体内に貯蓄された水分を排泄する作用や、
間脳(かんのう)にある体温調節中枢に働きかけて、体温を高くする作用があります。
そして、この黄体ホルモンが体温を高くする働きを利用して基礎体温がチェックできるわけです(基礎体温 参照)。