[コラム]膣の自浄作用
腟粘膜は重層扁平上皮という組織からなり たっています。
この組織には分泌腺がないので腟分泌物はありません。
ではなぜ腟の中が 潤ったり、おりもので下着が汚れるのでしょう。
腟の内容は、腟上皮からの漏出液、子宮頸管部の分泌液、それに腟壁の剥離上皮細胞、
白血球などが混在してなりたっています。
そのため、健康な女性であっても白色透明または、牛乳のようなおりものが出るのです。
さらに腟の中にはデーデルライン桿菌(かんきん)といって乳酸菌の一種が存在し、
腟上皮細胞内のグリコーゲンを使って乳酸をつくりだしています。
そのため、腟の中は、常に乳酸の強酸性(Ph4.6から5.0)に保たれています。
このことは、腟内に外界から細菌が入ってきて、繁殖することを防ぎます。
そしていつ も腟を清浄に保つのです。これを腟の自浄作用といいます。
この自浄作用は、腟上皮のグリコーゲンの豊富さと関係が深く、そのグリコーゲンは
卵胞ホルモンと比例しています。
そのため次のようなときには、自浄作用は弱くなってしまいます。
①卵胞ホルモンが減少したとき
②抗生物質の使用でデーデルライン桿菌が減少したとき
③頸管分泌物が増加して腟の酸性度か弱くなったとき
④会陰の裂傷などにより、外からの菌が腟内に侵入したとき
⑤不必要に腟内をビデなどで洗浄したとき
⑥糖尿病、甲状腺疾患、ガンなど消耗性疾患にかかったとき
⑦腟内にタンポンなどの異物を挿入したとき
― 腟の酸性度が減少すると自浄作用が低下して、
腟内容物にたくさんの細菌と白血球が増加し、膿のような黄色いおりものがふえます。